イカオ・アコ国際研修センターが位置するシライ市中心から離れ、時に険しい山道を走ること約1時間。小高い丘陵が連なるそこにあるのはシバトという集落。シバト村の成立は60年ほど前に遡ります。当時隣島パナイ島のイロイロ市に住んでいた先住民族の一部がネグロス島に移住し、その山間部に集落を作ったことが始まりです。しかしこのシバトはあるひとつの問題に頭を悩ませてきました。水源地から距離があるために、水不足に常に晒されてきたのです。イカオ・アコは今年からTOTOの助成を受け、この問題の解決に尽力しています。

これまでシバトでは、遠い水源まで毎日500m、最大で1kmほどの距離を往復して水を運んでいました。こうまでして水を運ばなければ料理や洗濯やトイレ、あるいは農業など様々な面で生活が立ち行かないのです。こうして改めて整理してみると、私たちが何の気もなく蛇口をひねったら出る水がどれほど生活を豊かにしているのかが分かりますね。こうした水供給の現状に注目したイカオ・アコが計画しているのは、近くの水源からパイプラインを通して水をくみ上げられるウォーターシステムの構築です。そしてそのために先日、どこから水を引くべきか調査がなされました。

草木をかき分けかき分け、このような道なき道を水源地まで歩きます。

計測の様子。登山に川歩きと、なによりもまず体力勝負です。

計測の結果、水源となる川から村までの距離は水平方向で780m、垂直方向にして60mもの距離があると判断されました。草木が茂る険しい道であることを考えると決して短い距離とは言えませんが、この事業がもたらす恩恵を思い、どうか前途洋々であることを祈るばかりです。

ウォーターシステムはまず、学生への衛生教育を目的として学校に優先的に設置される予定になっています。また、最終的には農業の灌漑用水として収入の向上にも寄与することが期待されています。とはいえ最終的なビジョンに至るには解決しなければならない課題がまだいくつかあります。まず住民の理解が得にくいこと。水不足とはいえ、立地や生業によってはあまり困っていない世帯もあり、そうした世帯は労力や共益費の拠出に消極的です。そしてもうひとつの問題は、メンテナンスが困難なこと。故障が発生したときに誰が修理するのか?またその費用を誰が負担するのか?費用や労働力の負担を不公平と捉える住民がいることが予想されます。そしてこうした将来の問題を解決する上でも、常に彼らと緊密なコミュニケーションを保ち、認識を共有しておくことも重要なのです。(中山)